フランスのリヨンを拠点に、世界中のレストランのグラフィックTシャツを作っている謎多きブランド「Reception(レセプション)」。旅行の際に訪れたレストランやバーでの思い出をカタチにしようとしたことがキッカケだというが、そのユニークな試みの根底にあるものや、モノづくりについて創設者のPierre Boiselle氏に話を聞いた。
とは「人」と「時間」と「場所」の正確な組み合わせ
ーーReceptionはいつスタートしたのでしょうか?
Pierre Boiselle2018年に2種類のTシャツをリリースしたのが始まりですが、ちゃんとしたコレクションをお店に並べたのは2019年の8月です。
ーーメンバーの簡単なプロフィールを教えてください。
Pierre Boiselle主なメンバーは3人です。Celine Lallyは、私の妻でビジネスパートナーで、彼女が実質的なボスです。ビジネスの事からクリエイティブな事まで必要があればサポートしてくれています。そして、ClementBertrandはアートディレクター。彼が毎シーズンのヴィジュアルとグラフィックのイメージを考えています。そして私、PierreBoiselleが会社のオーナーであり創設者です。ブランドに関するすべての事について、時には「やりすぎ!」というほど関わっています(笑)。
また、この小さなグループに加え、いくつかのクリエイティブ集団と仕事をしていて、彼らはブランドのキーメンバーとも言えます。一例として、日本人アーティストのヤマセアユミ、フォントデザイナーのAxelPelletanche、フォトグラファーのThibaut GrevetとMatteo Verziniなどがいます。
ーーブランドの掲げているテーマを教えてください。
Pierre BoiselleRECEPTION(接待/歓迎会)とは「人」と「時間」と「場所」の正確な組み合わせから生まれるものです。友人とディナーに行き、夜遅くまで楽しむ。この目には見えない、触れる事もできない「空気感のエネルギー」をイメージしています。
レストランやバーは、私にとって旅のリラクゼーションでありレジュメ
ーー実際に皆さまが足を運んだ、世界各地のお気に入りレストランやカフェのグラフィックTシャツを作っておられます。その企画をスタートさせるキッカケになったお店。さらには、その企画が生まれることになったエピソードがあれば教えてください。
Pierre Boiselle最初にリリースしたのは、東京の「開花屋 by the sea」とフィレンツェの「Trattoria Gargani」というお店の2種類のグラフィックTシャツです。この2つの場所には何度も足を運び大切な場所だったので、真っ先に選びました。友人や同僚、妻との素晴らしい思い出がここには沢山あります。レストランやバーは、私にとって旅のリラクゼーションでありレジュメでもあります。人はそこで人と会い、食事をし、ドリンクを飲み、社会生活を営みます。しかし、そこに明確な目的はありません。
ーーつまり、当初は自分たちの思い出、お土産という感覚だったのでしょうか?
Pierre Boiselleそうです。しかしそれだけでなく、ワインやごはんをシェアするように、思い出も他の誰かとシェアしたかったのです。もともと、メンズのトータル・ウエアで自分のブランドを表現することを夢見ていたのですが、それが決して簡単な事ではないということもわかっていました。ただ、Tシャツを作った事でそれが少し容易に感じられるようになり、Tシャツの成功がさらなる挑戦への自信を与えてくれました。
ーーなぜ飲食店だったのでしょうか?また、飲食店以外とのコラボもありますか?
Pierre Boiselleレストラン、バー、クラブに対する敬意からというだけです。今後のリリースとして、ブラジルのグロッサリーやフランスの図書館にも注目しています。
ーーコラボする店舗やグラフィックデザイナーはどう決まるのでしょうか?ブランド内でルールなどがあれば教えてください。
Pierre Boiselle1つだけルールがあります。それは、「その場所に心からの愛情があるかどうか」です。
コラボレーションではなく、トリビュートをしている
ーーコラボしたいお店が、すでにオリジナルTシャツを作っている場合はそれをお土産として購入しますか?それともそういうお店ともコラボの打診をするのでしょうか?
Pierre Boiselleどちらもすると思います。しかし私たちのトリビュートアイテムは、コラボレーションとは異なります。なぜなら、私たちが感じたお店のイメージを、私たちなりに自由に表現しているからです。もちろん敬意を表しながらですよ。
ーーTシャツ以外のアイテムを作るようになったのはいつからですか?それはどのような理由でスタートしたのでしょうか。
Pierre Boiselle先ほどお話ししたように、私たちはブランド創設以前から自分たちのメンズウエアのコレクションを発表したいと思っていました。Tシャツは何かを発信するものとして最高なファッションアイテムなので、まずはそこからスタートしただけなんです。
音楽もデザインプロセスにとって重要な役を担っている
ーーメインのコレクション(Tシャツ以外のアイテム)について。デザインソースや、インスピレーションを受けているものはありますか?
Pierre Boiselleまずは旅行です。いまは新型コロナウイルスの影響でフランス国内しか移動できませんが、インスピレーションを受ける主要なソースです。また、音楽もデザインプロセスにとって重要な役を担っています。
ーーどういうライフスタイルの人に向けて製品を作っていますか?
Pierre Boiselle順番はつけられませんが、「食」「ファッション」「アート」「旅行」の分野において、ある種、敏感な感覚を持ったお客様に向けて作っています。
夢は、東京でサンドウィッチ&ワインバーを開くこと
ーーモノづくりにおいて大切にしていることは何ですか?
Pierre Boiselle品質こそが重要で、試金石となりうるものだと思います。とくに、私たちのような小規模の新参ブランドにとっては大事なポイントだと思います。
ーー日本のマーケットに関して、どのように感じていますか?
Pierre Boiselleここ10年、年2回のペースで東京に旅行できたのはラッキーでした。日本のマーケットはいつでもエキサイティングだと行くたびに感じます。品質を求めることについての厳しさや、みなさんのファッション知識の広さを感じます。食に関しては、ケタ違いに素晴らしく、私の知る限りヨーロッパ、アメリカのどの場所にも勝るものです。
そのような日本で、私たちのブランドがより多くの方に知ってもらえると嬉しいですね。そのためにも、品質の面において、今よりもより一層気を配った製品を提供していきたいと思います。ちなみに、私の今の密かな夢は、東京でサンドウィッチ&ワインバーを開くこと。そこでも洋服を販売出来たらなと思っています。
東京の有名なレコード・バーとのトリビュートを計画中
ーー今後の展望について教えてください。
Pierre Boiselle2021年5月にリリース予定のカプセル・コレクションに向けたサンプル作りを始めています。これは、東京の有名なレコード・バー(ミュージック・バー)とのトリビュートです。きっと皆さんも気に入ってくれると思いますよ。また、同時進行として来年の秋コレクションの準備もしています。
プライベートでは、リヨンから引っ越して、ミラノあるいはビアリッツ(フランス南西部)に引っ越そうかと考えています。コロナの問題があったことで、居心地の良い場所を離れ、子供たちに何か新しいものを見せてあげたいと思うようになりました。別言語が話され、別文化を感じられるような大都市にしようか、よりスポーツや自然に触れられるビアリッツが良いか悩んでいるところなんです(笑)。