長年にわたり、日本で最も高い人気を誇る英国靴ブランドのひとつとして親しまれるクロケット&ジョーンズ。ファッション業界人の間でも、誰もが一足は持っておくべき靴として不動の評価を得ています。中でも本格靴に関して高い見識をもつ7人の方々に、同ブランドの魅力とお気に入りの一足について語っていただきました。
エイジングの“伸びしろ”が半端ない。
これがクロケット&ジョーンズ最大の魅力
Brift H 代表長谷川裕也
この仕事を通して今まで、5000足以上のクロケット&ジョーンズを磨いてきました。そのうえで思うのは、これほど“育てて伸びる”靴はないということです。最初からバランスのよい佇まいですが、しっかり手入れをしながら5年くらい履き込んでいくと素晴らしい味が出てきます。いわゆる本格靴の中ではミドルレンジの価格帯に属するブランドながら、エイジングの美しさにかけては最高級靴にも比肩するほどですね。美しく育てるためには、しっかりシューキーパーを入れて履きジワを伸ばし、定期的に栄養クリームを塗り込んでいくことが基本。愛情をこめてメンテナンスを続けていくと、しっかりそれに応えてくれる靴ですよ。
ブリフトアッシュに持ち込まれたクロケット&ジョーンズの中でも、特に長谷川氏が印象に残っているという一足。クロケット&ジョーンズとしては珍しいコードバン製で、しかも贅沢なホールカット。接ぎ目がないぶんキズのない革を厳選して使用しなければならないため、希少性の高い靴といえます。スラリと伸びた細身のトウシェイプもエレガント。
Brift H代表長谷川裕也
1984年生まれ。20歳のときに靴磨きを始め、24歳で青山にブリフトアッシュをオープン。顧客と対面しながらカウンターで靴磨きを行うスタイルを確立し、高級シューシャインサービスのパイオニアとなる。2017年にはロンドンで行われた靴磨き世界大会で見事優勝し、名実ともに世界一のシューシャイナーに。
Brift H公式サイト
https://brift-h.com/
Mr.ハケットから教わった
“最高のデイリーシューズ”
THE RAKE JAPAN 編集長松尾健太郎
クロケット&ジョーンズの魅力は、ハケット ロンドン創始者のジェレミー・ハケットさんから教わりました。彼は日本に様々な英国文化を伝えた功労者ですが、中でも大きなものがスーツの本切羽(今では当たり前の意匠ですが、私が若いころは誰も知らなかったのです)と、クロケット&ジョーンズの靴です。彼はチャッカブーツの「チャートシー」を愛用していて、「これはどんな服にも合わせられるんだ」と教えてくれました。早速私も手に入れて、以来25年ほど履き続けています。クロケット&ジョーンズは私の中で“惜しげもなく履ける靴”の最高峰に位置する靴。高級ビスポークシューズも所有していますが、やはり傷つくのが怖くおいそれとは履けません。その点クロケット&ジョーンズは傷や汚れを気にせず履けるし、そのほうがカッコいい。そういったことを教わったのもハケットさんからでした。
Mr.ハケットが“どんな服にも合う”と絶賛していたという、タバコブラウン・スエードの「チャートシー」。50年以上前からクロケット&ジョーンズの定番としてロングセラーを続ける大定番です。「“手入れはたまにブラッシングするだけでいい。ただしシューキーバーは絶対入れること”とハケットさんに教わりました。こういう気楽さも魅力ですね」と松尾氏。
THE RAKE JAPAN 編集長松尾健太郎
1965年生まれ。男子専科、ワールドフォトプレスを経て世界文化社に入社し、「MEN’SEX」の創刊に携わる。クラシコイタリア、本格靴といったムーブメントを牽引し、2005年に編集長に就任。のべ4年間同職を務める。メルセデスマガジン編集長や新潮社ENGINEクリエイティブ・ディレクターなどを経て、THE RAKEJAPAN創刊編集長に就く。
THE RAKE JAPAN公式サイト
https://therakejapan.com/
これからの時代こそ魅力が輝く、
本物の価値を備えた靴
MEN’S CLUB 編集長西川昌宏
ニューノーマルと称されるこれからの時代、革靴は仕事のユニフォームではなくなるでしょう。だからこそ、革靴は働く大人にとっての“意思表現”になると思います。惰性で選ぶのではなく、戦略的に、確かな意思をこめて選ぶ。そんな新時代に、クロケット&ジョーンズが備える“本物の価値”がますます輝いてくると感じますね。私が愛用しているストレートチップ「ハラム」のように、これ見よがしな派手さはないけれどどんな服にも馴染み、装いを引き締めてくれる靴が多いのもクロケット&ジョーンズの強み。主張しないからこそ万能に活躍するオールラウンダーです。英国靴のスタンダードを体現するものづくりを大いにリスペクトしていますね。
定番「オードリー」と同じストレートチップですが、こちらの「ハラム」はよりスマートなラスト348を採用。コストパフォーマンスに優れたスタンダードラインの一足です。「非常にベーシックですが、スーツはもちろん、ジャケパンなど様々なスタイルにマッチしてくれるところがお気に入り。出張の際にも必ず持っていく靴ですね」と西川氏。
MEN’S CLUB 編集長西川昌宏
1975年生まれ。アシェット婦人画報社(現ハースト婦人画報社)で女性誌の編集者を務めたのち。2003年にMEN’S CLUB編集部へ配属。同誌副編集長を経て2019年より現職。MEN’SCLUBの原点である「トラッド」を改めて掲げ、好印象な大人のファッション、ライフスタイルを提案している。
MEN’S CLUB公式インスタグラム
@mensclub.snap
リラックススタイルも品よく見せる
格上げ力が本当に便利
ファッションディレクター&スタイリスト森岡 弘
リラックスが欠かせないエッセンスとなっている今のファッションシーンでは、ジャージーやニット素材のジャケットやスーツをスタイリングに活用することが増えてきました。そんなとき、大人の品を足元で下支えする重要なアイテムとして、クロケット&ジョーンズはとても便利ですね。英国伝統のクラシックを継承しつつも、時代性を巧みに表現するモダンさが光るところが同ブランドならではの魅力。長い歴史の中で数々の一流ブランドに靴を提供してきた経験が活かされているのでしょう。個人的にはタッセルローファーの「キャベンディッシュ3」をヘビーユース中。スーツから休日カジュアルまでいろいろなシーンで重宝しています。
タッセルローファー・ブームの火付け役となったベストセラーモデル「キャベンディッシュ」。こちらの“3”は日本人の足型に合うようラストをモディファイした進化版で、より履き心地がアップしています。コインローファーに比べて細身でドレッシーな顔つきが魅力。ビジネススタイルでも、デニムに合わせてカジュアルにも活躍します。
ファッションディレクター&スタイリスト森岡 弘
1958年生まれ。早稲田大学卒業後にMEN’SCLUB編集部でエディターとして勤務後、独立して自身のオフィス「グローブ」を設立。現在は広告や雑誌、著名人のスタイリングのほか、講演会やファッションコンサルティングなど幅広く活躍。最近はYouTubeチャンネル「森岡弘の着分は上々」、DMMオンラインサロンで「森岡 弘のスタイル塾」を立ち上げ、デジタル分野でも活動。
YouTubeチャンネル
「森岡 弘の着分は上々」
旬のフレンチスタイルにも
クロケット&ジョーンズは最適
スタイリスト四方章敬
クロケット&ジョーンズの靴は毎月必ずといっていいほど、雑誌のスタイリングに活用しています。特にタッセルローファーの「キャベンディッシュ3」やコインローファーの「ボストン」などは使用頻度が高いですね。どれも正統派のクラシックシューズなので、シーズンごとに洋服の旬が変わっていってもスタイリングに馴染んでくれるところが魅力だと思います。ここ数シーズンはフレンチトラッドが盛り上がっていますが、そんなスタイルでもクロケット&ジョーンズが活躍。Uチップの「モールトン」にモノトーン千鳥のパンツと合わせ、トップスはニットアンサンブル。こんなコーディネートなども今、すごく格好いいと思います。
スタイリストとして独立した直後、初めて手に入れた本格靴がクロケット&ジョーンズだったという四方氏。現在はこちらの「ボストン」をはじめ多数のモデルを所有し、愛用しているそう。アメリカンテイストを感じさせる丸みを帯びたトウシェイプと柔らかなスエード素材により、上品なカジュアルスタイルに大変愛用のよい一足です。
スタイリスト四方章敬
1982年生まれ。武内雅英氏に師事したのち、2010年に独立。「LEON」「MEN’S EX」「MEN’S CLUB」「Men’s Precious」「THE RAKEJAPAN」など、ラグジュアリーファッション誌のほとんどでスタイリングを担当。今、最も人気のあるスタイリストのひとり。ベーシックを基調にしつつ、さりげなく旬を取り入れたコーディネートに定評あり。
日本人のお客様に合わせた
フィッティングを追求しています
クロケット&ジョーンズ CEOジョナサン・ジョーンズ
英国伝統の製法を堅守し、クオリティにこだわった靴作りを貫いていることはもちろんですが、加えてクロケット&ジョーンズがこだわり続けるのは“フィッティング”の追求です。「ボストン」や「キャベンディッシュ」といった定番モデルも、日本のお客様の足型に合わせてラストに改良を加え、現行の「ボストン2」「キャベンディッシュ3」に至っています。本格靴に対して非常に目の肥えたお客様がたくさんいらっしゃる日本のマーケットにおいて、クロケット&ジョーンズの靴が長年好評をいただいていることに誇りに思いますね。今後もたゆまぬ努力を続け、さらにご満足いただける靴を作り続けていきます。
クロケット&ジョーンズ CEOジョナサン・ジョーンズ
1953年生まれ。クロケット&ジョーンズ創業家の4代目で、氏のCEO就任以前はOEMメインの裏方的存在であった同社を独立したシューズブランドとして躍進させる。年2回開催されるピッティ・ウオモにも毎回参加し、世界のバイヤーたちと交流。彼らの様々なリクエストへ柔軟に対応し、本格靴のトレンドを牽引している。
伝統と進化の両立においては
右に出るものはありません
シップス ドレス バイヤー今村恭平
良くも悪くも自分たちのスタイルを曲げない英国靴ブランドが大半のなか、クロケット&ジョーンズは異例といえるほど柔軟な対応力を見せてくれます。我々の細かなリクエストにも粘り強く対応してくれて、本当にありがたいですね。だからこそ、日本でも圧倒的な人気を博しているのだと思います。それから圧巻なのが、本社に所有するアーカイブの豊富さ。世界で最も多くの木型バリエーションを有するブランドともいわれるだけあり、素晴らしいラインナップを誇っています。これは同社の歴史を物語るものでもありますね。伝統を大切に守りつつ、常に前進を続ける姿勢こそクロケット&ジョーンズ最大の魅力だと思います。
クロケット&ジョーンズではローファーを多数愛用中の今村。中でもお気に入りと語るのがこちらのワンピースタイプです。「実はこちら、同じ型をリピード買いした2足目。私はクラシックをベースにしつつ、適度に抜け感を加えた服装が好きなのですが、軽やかな印象のこちらはそういった装いを築くうえで重宝しています」
シップス ドレス バイヤー今村恭平
1985年生まれ。約10年間の販売経験を経てメンズドレスバイヤーに就任。SHIPSきってのこだわり派として知られ、世界の一流ブランドとともに様々な別注アイテムを開発している。モットーとしているのは、“お客様を飽きさせないこと”。クロケット&ジョーンズは個人的に最も多くの足数を所有している本格靴ブランドでもあるそう。