ここ最近盛り上がりを見せている、中東的な魅力を発信するブランド群。デザイナー、タリ・クシュニールが手がけるイスラエル発のブランドもそのひとつ。静けさとくつろいだムードが同居するアイテムたちには、イスラエル出身のデザイナーならではの美学が息づいている。 今回は彼女にメールインタビューを敢行。ブランドテーマや物作りの背景などを教えてもらった。
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¥51,000(+tax)
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¥43,000(+tax)
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¥51,000(+tax)
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¥36,000(+tax)
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¥36,000(+tax)
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¥36,000(+tax)
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¥32,000(+tax)
――ブランド設立の経緯とテーマについて教えてください。
2012年まで、主にヴィンテージやアンティークの洋服を扱う店舗を所有していましたが、店を閉め、テルアビブで唯一残っているファッションウエアを製造する工房でアシスタントデザイナーとして数年間働きました。そして、2015年に自身のブランドをスタートしました。日々触れていたヴィンテージウエアや工房で働いていた時に身に付けた知識をフル活用しながら、デザインのベースとなるファッションの歴史を紐解く。そんなことから始めました。なぜなら、独学でスタートしたデザイナーである私にとって、ファッションと衣裳の歴史はとても重要だと考えていたからです。
もっとも、服作りにおける基礎的なことは子供の頃に、私の祖母から教えてもらいました。その上で、 ヴィンテージやアンティークの衣服を扱いながら、その服の歴史や使われている技術などを自分の中に取り込んでいったんです。
photo by
Izabela Mac Van
デザイナーの
タリ・クシュニール
――今シーズンはどのようなアプローチで制作されたのでしょうか。
ブランドやプロダクトの背景にはいつも物語が潜んでいます。デザインはストーリーテリングの一種であり、私のコレクションの裏にあるストーリーはデザインプロセスの非常に重要な部分です。今年のコレクションは地中海でのライフスタイルにインスパイアされています。ご存じのとおり、海沿いでの暮らしは個々人の生活に大きな影響を与えます。私が住む街、テルアビブにも海があります。ここの夏は長く、暑く、人々の装いもそれに適応したものです。また、テルアビブという街にはいくつもの文化が混在しており、ここでの装いは、他の場所とは異なり、ゆったりとくつろいだムードを醸し出します。
スペインの画家ホアキン・ソローリャの絵画も制作の助けになりました。彼は地中海で様々なシーンを描き、そこでの強い光を完璧に捉えました。私はまた、ハイファ港(イスラエルの北部の都市)とテルアビブのビーチにおける歴史的な写真も参考にしました。海はとてつもなく大きな力を持っており、私は日々の生活の中でとても影響を受けています。落ち着ける場所がすぐそばにあることを思うだけで、幸せな気分になれるんです。
――ブランドのアイデンティティや定番と呼ぶにふさわしいアイテムがあれば、理由も含めて教えてください。
強いて挙げるとすれば、パンツでしょうか。個人的には本当にいいパンツを見つけるのは 難しいと思っていますので。私は、今回のコレクションを作る際に、近しい人たちにいろい ろと話を聞きました。いつも着ている服に対するヒアリングですね。私はリラックスして過ごせる服を好みます。脱ぎ着が楽で、手入れも簡単。人々が自然体で楽しめるような、それでいて、誰しものワードローブにすんなりと馴染むような。バイヤーや顧客たちの意見も参考にして、意図していたようなアイテムに仕上がったかなと思っています。
――特徴的な襟の形のシャツや、素材使いに目を奪われます が、デザインについて重要視していることは何でしょうか?
私にとって最も重要なことは、服を通しての経験です。今の時代、「ユーザーエクスペリエンス」について話すことは非常に一般的ですが、重要なことだと思います。美しさ、プロポーション、デザイン以外に、服を着ている時にどのように感じているかを考慮することが必要です。
布地のほとんどは、もともと地元のベッドリネン産業用に作られていました。これらの布地は染色も質素なものであり、長時間の使用に耐えられるように作られているため、洗濯や着用が容易です。また、これらの布地は、時間とともに柔らかくなり、着用者の体の形をして「生きて」います。
衣服はその人を引き立てるものであってほしいと思っています。襟型についても同様で、それらがどのように着る人の顔を彩るかという点を強調して新しい形を作りました。
――クリエーションに関して大きな影響を受けたブランドや アート、時代や都市などがあれば、教えてください。
アートは常に私の作品の出発点であり、基礎となっています。特にアメリカのモダニストアーティスト、ジョージア・オキーフ、ドイツの画家オットー・ディックス、そして写真家のアウグスト・サンダー。私は特に戦間期(1918-1939)の芸術に夢中になっています。非常に不確実な未来(現代も似たような時代だと私は思います)と、混沌とした時間と、審美的に多くの新しいことがその時代に現れました。イスラエルは多文化的な場所であり、非常に新しい国です。歴史が浅いゆえに、新しいものを創造する自由が広がっていると感じています。
衣服のデザインにおいては、特にマーガレット・ハウエルの仕事が気に入っています。彼女が作る服は、着る人に多くの豊かな経験を提供します。彼女は洋服を作る上で何が重要なのかわかっていて、そしてまた商業的な面も疎かにせずに、何年もの間、一貫したもの作りを行っています。私自身顧客として、愛し続けているブランドです。
――ここ数年、中東アジアらしいミニマリズムといいますか、独特の緊張感を持つブランドが増えてきているように思います。この流れについてどう思いますか?
素晴らしいと思います。大量なものや情報に囲まれている混沌とした世界の中で、静けさをたたえた衣服を纏うこと。イスラエルの環境は非常にユニークであり、ファッションの世界ではまだまだ知られていない存在です。中東を取り囲む複雑な状況、そして非常に多くの国籍と民族が入り混じる様は、インスピレーションの限りない”井戸”となっています。
――日本での展開に伴い、日本の顧客にどんなところを注目して欲しいですか?
私は日本の顧客と知り合うことができて、とても感激しています。私は、自分のアイデアとブランドのコンセプトを届けたい。私たちが慣れ親しんだ西欧のブランドとはまた違った、衣服の体験を提供できればと思っています。私が作る服が生活の一部となってくれれば、これ以上に嬉しいことはありません。皆さんに受け入れられるのを願っています。
<問い合わせ先>
SHIPS 渋谷店
TEL:03-3496-0481
SHIPS グランフロント大阪店
TEL:06-6359-2271