実際にスポーツやアウトドアが楽しめるほどの高機能素材を使用し、デザイン性も高い。そんな謳い文句のブランドは数多あるが、今春日本に上陸した「DYNE(ダイン)」は、そこに今までにない形で半歩先を行くテクノロジーを搭載させた唯一無二のブランドだ。デザイナーのクリストファー・ビーヴァンスは、かのNIKEでディレクターを努めてきた言わばテクニカル素材のスペシャリスト。今あらゆるシーンから脚光を浴びる、彼の新しいクリエイションが目指すものとは?
ニューヨークからの影響だけでなく
DYNEはユニークな機能に溢れています
??DYNEはどういうイメージでスタートしたのでしょうか?
「僕の祖父は、実は昔ニューヨークでテーラーを営んでいたんですね。その影響は若いころからあったんですが、同時に自分はNIKEのプロダクト開発に関わるようになったんです。DYNEを始めるうえで、その2つの要素は何かしら反映していると思います。NIKEに関しては今でもスペシャルな企画を一緒に取り組んだりすることはありますよ」
??かつてニューヨークにいっらっしゃったとのことですが、DYNEはポートランドのブランドですよね。
「そのとおりです。今は自分も家族もポートランドに住んでいます。ニューヨークはもともと育った場所ですし、自分のいろいろなネットワークがあるのですが、行くと遊んじゃうので(笑)。ポートランドは静かだから仕事に集中できるんですよ」
??でも、デザインは非常に都会的でニューヨークのスポーティカジュアルのエッセンスも感じさせますね。
「そうですね。もちろんニューヨークの影響はあると思います。ただ、そういったデザイン面だけでなく、DYNEはユニークな素材や機能、そしてテクノロジーを取り入れているブランドでもあります。例えば、スイスのテキスタイルメーカーである“schoeller(ショーラー)”の撥水性・透湿性に優れた生地を採用することで快適性を高めたり、サンフランシスコのクロニカルという会社のチップをジャケットに搭載したりと、これまでにないアプローチに取り組んでいます」
??チップは何のために搭載しているんですか?
「スマートフォンのバーコードリーダーで、洋服のテキスタイルなどの情報を読み取ることができるんです」
ポートランドは新しくクリエイティブな
ことを始める人が集まってくるんです
??それは面白いですね。やはりあらゆるスポーツにも対応するのでしょうか?
「自分はスポーツが好きですし、テニスやバスケットボールもしますが、それに特化した服ではありません。ただ、機能としては非常に満たされたものを作っているという自負がありますから、それをどう取り入れるかは着る人が決めることだと思っています。より機能的なものとDYNEを合わせて着ることもできるでしょうし、スタイリングとしてはいろいろなことができる洋服です」
??なるほど。ポートランドは今、そういう新しいことに取り組むブランドやムーヴメントがあるのでしょうか?
「そうですね。ポートランドにはナイキという大きな会社があって、その周辺に何かをしようと多くの人たちが集まってくる場所でもあります。自分たちが目指すようなテクニカルなものも作れる環境(工場)も整っていますし、それを通して新しくクリエイティブなことを始める人も多いですね。もちろん僕もその一人だと思っています」
??仕事のインスピレーションは、どこから得ることが多いですか?
「やっぱりファブリックです。自分の周りに面白い素材がいっぱいあるので。もちろん自分の周りにいる人たちもそうですし、ニューヨークで地下鉄に乗ったりすればそこから影響も受けます。あと、ヴィンテージの軍モノからは非常に多くのことを学びますね。すべてがファンクションなので。あと、東京に来ると、多くのファッションやカルチャーに触れるので影響は大きいですよ」
??DYNEは、東京のライフスタイルとも非常に相性がいいと思うのですが、それも踏まえて今後のヴィジョンを教えてください。
「今回SHIPSとも一緒に展開ができるようになったので、面白いプロジェクトを早速始めたいですね。実は、もうヒップバッグ風にもメッセンジャーバッグ風にも使用できるバッグのプロジェクトを進めています。都市生活のいろいろなシーンに対応する機能に満ちたバッグができればと思っています。加えてNIKEのフライニットのように靴だけに使う機能素材を服に使おうと思っています。ポートランドの生地の展示会で見つけたものがあって、まるでメッシュのような新しいファブリックを全体に貼り合わせた新しいカットソーを試作中です。そういったものもこれから発表していきたいですね」
伸縮性に富んだナイロンウールポリウレタン仕様の立体裁断パンツ(右、中央)と撥水性・透湿性に優れたshoeller社のファブリックを採用した膝下丈のパンツ(左)。どれも驚くほど動きやすく、加えてリフレクターやリブなどの切り替えで、都会的なエッセンスを感じさせるのがDYNEらしい。
左から
パンツ 参考商品/DYNE',' パンツ ¥27,000(+tax)/DYNE',' パンツ ¥27,000(+tax)/DYNE
スウェットシャツでありながら首回りにフードを内蔵したこちらは、やはりストレッチ性の高いナイロンウールポリエステルのボディで仕上げている。ジャケットやコートのインナーとしても、スポーツ時のカットソーとしても活用できる。
スウェットシャツ 各¥38,000(+tax)/DYNE
こちらのライトアウターのボディも、撥水性の高いshoeller社の生地を使用。
フィッシュテールや丸みのある裾の前合わせなど、モッズコートやテーラードジャケットのディテールを想起させる。小雨程度なら傘をささずに対応できる。
左から
ジャケット ¥70,000(+tax)/DYNE
ジャケット ¥40,000(+tax)/DYNE
クリストファー・ビーヴァンス Christopher Beavans
ニューヨーク生まれ。FIT(ファッション工科大学)を経て、著名なスポーツブランド数社で経験を積む。特にテキスタイルに関する知識と開発経験は豊富で、その道のスペシャリストとして多くのプロジェクトに関わる。現在でもNIKEではディレクターという立場で物作りに携わるほか、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボ研究員12人のメンバーの一人にも選出されている。