90年代の終わりに、NYを拠点に「ENGINEERED GARMENTS(エンジニアド ガーメンツ)」をスタートさせた鈴木大器氏。それから15年以上の歳月が経過した今でも、氏の“働く男の服”を作るというスタンスは何も変わっていない。それは、ともすると世界のトレンドや利益優先のファッションビジネスとは全く異質に映るが、鈴木氏は今、何に着目しながら洋服作りをしているのだろうか? 一時帰国中の貴重な時間を割いて実現したショートインタビューを、今回実現したSHIPS との初コラボアイテムの解説も交えながらお届けする。
????まずは、今回のコラボレーション企画に至った経緯と、SHIPSからの依頼に対する感想をお聞かせください。
鈴木「今回の企画は、納期とデザインを心配されて、通常よりもずっと長い猶予をいただけて、遡ること1年前からの企画でした。内容は、ネイビーのブレザーとグレーフランネルのトラウザーズというものでしたので、個人的には非常にSHIPSらしいクラシックなアイテム選びだなと感じました。これはSHIPSのスペシャル企画としては、ぴったりだと思います」
????各々のアイテムに関して、デザインの簡単なポイントをお教えください。
「ブレザーに関しては、EG(エンジニアド ガーメンツ:以下同)の典型的なダブルポケットなどのディテールをプラスしています。それでいて、ブレザー自体の仕様をよりクラシックにまとめるようにエッジステッチなどを使用して、SHIPSらしいスタイルを意識しています。裏地の使い方で少し遊んでいますが、外見はかなりトラッドな仕上がりだと思います。トラウザーズに関しても、EG的なイレギュラーなバックポケットを採用していますが、パッチポケットを中縫いしたり、ウエストバンドにステッチを打たなかったりと、よりドレッシーな表情に仕上げているため、こちらもSHIPSらしいクラシックさが感じられると思います。逆に言えば、2着とも見た目はクラシックですが、良く見ると面白いディテールが各所に織り込まれているというのがポイントになっています」
????なるほど、画期的なコラボですね。加えて、今現在のご自身のクリエーションに関してはいかがでしょうか? どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?
鈴木「今回の秋冬シーズンに関して言えば、イメージしたものは自分がリアルタイムで経験した80年代がベースになっています。例えば当時のコム デ ギャルソン・オムに象徴されたような、黒やダークネイビー、ダークグレーといったかなりダークな色目が主体で、素材もテクスチャーや立体感があるモノが多くなっています。個人的には80年代のNYスタイルを意識しました」
????今現在NYから見て、改めて日本(東京)カジュアルのユニークさや特異性を感じるところはありますか?
鈴木「NYからの視点で見ると、確かにそのユニークさや変わった部分が目に付くので、凄いなぁと思います。でもよく考えてみると、部分的にですが、誰かがやり出した事を何も考えずにただ追随しているようにも見えます」
?????それは興味深いですね。それでは、ずばりEGにとっての理想の男性像、コーディネートイメージとはどんなものなのでしょうか?
鈴木「“働く男の服”のスタイル。ブランドスタート時からこれは変わっていません」
?????毎回、ルックブックのクオリティが高く注目を浴びますが、モデル選びやスタイリング、写真のテイストなどでこだわっている点はありますか?
鈴木「自分で着たい服を作っているので、モデルは僕個人の実年齢に近い人を毎回探していますが、なかなか難しいですね。スタイリングはいつもレイヤードが基本です。あとは、普段のイメージと違うスタイリングを見せたいといつも考えています。写真に関してはフォトグラファーと相談して毎回何か新しいアプローチを出すようにしています」
?????今、日本(東京)で注目しているブランドやデザイナー、スポット(場所)はありますか?
鈴木「あまり情報がないので、ブランドやデザイナーに関してはないのですが、スポットは神保町です。アウトドア用品の店、本屋さん、うまいレストラン、喫茶店などなど、好きな物がまとまって集まっているのが嬉しいです」
?????NYに関してはいかがでしょうか? 同様に、注目しているブランドやデザイナー、スポット(場所)は?
鈴木「NYでは、アッパーイーストにあるイタリアのハンティング屋さんで、Beretta というお店ですね。機会がある度に立ち寄っています。他にはめったに出かけないのですが、Paul Stuart やOrvis あたりには行っています。スポットとしては、最近興味があるのは、ハーレムやロングアイランドシティとか、今から変わりつつありそうなところです。僕らの事務所のあるあたり、ガーメントディストリクトやヘルズキッチンも同じ理由で気になりますね。ここ数年の変わり方はもの凄いですよ」
?????それは気になりますね。最後にEGとして次なる目標、ヴィジョンがあれば具体的に教えていただけますか?
鈴木「何か新しい事に取り組みたいという意識はいつもありますが、具体的にどうかというと、結局ギリギリにならないと自分でも分からないというのが本音です。単純に、クラシックアメリカン、ヴィンテージ、ミリタリーといったカテゴリーから、もう一歩踏み込んだ何かを作りたいという抽象的な考えはいつもありますね。ただ先に言った“働く男の服”を作るという基本的なヴィジョンは、もう変わりようがないです。そして変えたくないとも思っています」
ドレス感の漂うウールのスラックス。ややゆったりとした2タックというEGらしいシルエットと、無駄なステッチなどを排除したミニマルな表情が都会的な印象を醸す。こちらもSHIPSのクラシックイメージを反映している。
パンツ ¥40,000(+TAX)/ENGINEERED GARMENTS for SHIPSMORE