蒲生龍之介
SHIPS PRESS
1994年生まれ。京都府出身。2016年入社。約6年間の関西のショップスタッフを経て、2023年春にプレス課へ異動するとともに上京。
松尾教平
SHIPS PRESS
1994年生まれ。兵庫県出身。2017年入社。神戸と軽井沢のアウトレット店舗スタッフを経験し、今春より現職。柴犬とお笑いラジオを愛する。
松ちゃん(以下松尾)のファッション史は古着からですよね。
そう。だから気になるものを掘っていくと結果的にアメリカに辿り着くって流れが多かったから、アメリカは教科書的なところがあるかも。
僕は真逆で、アメリカのファッションやカルチャーをほぼ通らなかった人生でした。むしろ「メイド・イン・USA」を意識的に避けてきたところがある。
僕は入社してずっとカジュアル担当だったけど、蒲ちゃん(以下蒲生)はドレスでしたね。
親の影響が大きいのですが、革靴にハマったり、ヨーロッパの背景に興味を持っていました。ここ最近のアメリカってキーワードを聞くと、ちょっと一個ぼやかされているというか。フィルターがかかっている感じがしません?
アメリカとは、とかお国柄みたいなしっかりした何か昔はありました。アメリカに限らず、どことなくですが厳格なルールがあって、それを知らないと着てはいけない、みたいな。
最近はそれっぽいものだったらいい、って解釈にもなっている。
すごく自由になりましたよね。ピッティ ウオモの会場に集まるウェルドレッサーたちも、アメリカ的なミックススタイルが増えている印象。
先生とか師匠みたいな人が少なくなったからじゃないか。昔の先輩世代は、セレクトショップや古着店のスタッフが教えてくれる色々なことに興味を持って、納得して買い物する感じだったと思う。
ここ数年でも、買い物の仕方が随分と変わっていると思う。
でも、今は古着店やリサイクルショップで気軽に買って、後からネットで調べることがいくらでもできますよね?そこから自分の好きを後付けしてく。
物を知ってから買うより、買ってから知る流れでしょうか。
そう、だから単純にお国柄とか、テイストを掛け合わせるとかテクニック的なミックスじゃない気がして。その人の中だけに繋がっている理屈やルールみたいなのが、他者からわかりにくくなってる。そこに面白さがある気がする。
買い物のルートが一気に増えたじゃない?ネットフリマから学べることも結構あったりして。僕も足で情報を得たいと思っているけど、ネットの調べものもやっぱり楽しいです。
大きなトレンドが生まれにくい理由はそこにあるんじゃないかな。服好きはみんなこれを持っている、みたいな現象って90年代や2000年代に比べて、随分減ったと思います。
自分の中でのミックス論が、後付けでどんどん確立されていくということは、その人にしかわからない道ができているということ。世代間での価値観に差が顕著に出ています。
SHIPSでも同い年にドレスとカジュアルのバイヤーがいるけど、松っちゃんも含めて4人全員、スタイルがまったく違う。もしクローゼットを公開しあっても、被るものってほとんどないはずですよ。
洋服への興味の入り口も出口も違うので。僕はコレクター気質で、モノから興味を覚えて、その周辺の年代やカルチャーを調べていくのが好きです。スタイルはその先に見えるもの、と思っているかな。
それって往年のスタイルですよね。僕も大阪のグランフロント店のアルバイトから始まったけど、その時の先輩たちはすごいファッションの精鋭揃いで。でも「これを買え」みたいな強制はなく、むしろ「ダサくなければオーケー」みたいな。
むしろその方がプレッシャー感じますよね(笑)
今までも取り扱いはあったのですが、秋冬にしっかり打ち出していこうと。
これまでは店舗でもメインって扱いではなかったですよね。むしろスタイリングのスパイスに使われる脇役のようなイメージでした。
銀座店と渋谷店はブランドとしてしっかり認知されているけど、他店舗はまだまだ。でも、他社さんでの取り扱いも多くないので、改めてSHIPSの強みにしたいなと。
店舗で働いていた時は、正直縁遠いブランドだな、と思って見ていました。ドレスに傾倒していた事もあり、接客の難しさを感じていたところもある。でも経験を重ねて、いろいろ魅力が見えてきました。
パンツ専業ブランドで、すべてメイド・イン・USA。そういうの、すごく好物。縫製がすごく丁寧とか、そういう訳ではない。ある種の雑味に愛着が湧くんです。
股上の設計とか裾の太さとか、洗練されているようにも見えるし、どこか野暮ったい。このバランスがドレス的な視点だと新鮮。
何かを得意としているブランドって、言い返せば全部が得意なわけじゃない。そういうところって、実直で安心感があるというか。
人間味がありますよね。こういうパンツをいろんな服にミックスしたくなりました。バランス型じゃないからこそ、ドレッシーな靴でもスニーカーでもいける不思議なバランス感がある。
僕がこのブランドを初めて穿いた時のパンツのトレンドが細身だったので、難しさを感じましたが、いまはこの太さが気分です。僕らの世代には多少値は張るものの、長い時間をかけて育てていくジーンズみたいな魅力がある。ガシガシ洗って、アタリを作って、シワも愛おしく穿くかっこよさって、古着以外で探すのって結構大変。
既製品でヴィンテージ感を楽しめる数少ないブランドの一つでないかと。僕らが入社した2016年とかは、スリムテーパードの「INDEPENDENT」ってモデルをくるぶし丈で穿いて、ソックス見せや素足で<ALDEN>のローファーを合わせるイメージ。
僕も穿いていました。普段はカジュアルだけど、時々ドレス売り場に立つ時に重宝するパンツでしたね。
ドレスのスタッフは基本スーツですしね。カジュアルのスタッフは「INDEPENDENT」に<ALDEN>はセットでした。ドレスもカジュアルも両方いける、万能なパンツって貴重かも。
ネイビーのジャケットや<BARACUTA>のG-9でタイドアップして合わせていました。
僕は足元とのバランスで考えるから、膝から下のパターンですね。
僕はむしろ股上から腰まわりの作りです。
<grown and sewn.>の裾幅は適度なゆとりがあるから、野暮ったいシューズでも合わせやすい。華奢すぎると足元が浮いて見えるし。SHIPSが長年仕入れている<ALDEN>がやっぱりちょうどいいです。
僕は腰回りがきゅっと詰まるとジャケットスタイルの幅が限られるというか。余白があると、スラックスっぽくも、チノっぽくもある。タックインしてベルトを閉めた時の収まり具合が、パンツの顔だと思っているんです。このバランスですかね。
定番モデルもあれば、ダックパンツのように今の雰囲気を感じるバリエーションを感じました。ダックパンツの「UNION」は<Carhartt>とかのトレンドの影響もあって、すっと腑に落ちています。
僕もブランドの同じ見え方だけど、選んだのはこのツイルの「MASON」。もうちょっと上品な印象ですかね。例えるならメゾンブランドが作っている綿パンみたいな雰囲気で穿いてみたい時に、イタリアのブランドで探しても出てこない、野暮ったさを生かしてみました。スタイリングの外しをパンツで作るって僕には難易度が高くて、いつもインナーや足元で作ってしまうんだけど、これは使いやすい。きれいな顔しているのに表情が抜けているって、ヨーロッパ好きからみても刺さるなって。
それは古着っぽいってこと?
イタリアものの古着って縫製が細かったりするけど、これはアメリカの雑味を感じることができます。でもパターンはヨーロッパっぽいというか。
僕はタックやクリースが入っているヨーロッパものに比べて、素朴でフラットな表面が気に入っている。丈感もクッションをほんのり作り、ジャケットのサイズ感も余裕をもたせ、土臭さを表現しました。
近年のSouthwickにも同じような印象を覚えるかな。
確かにそうかもしれません。
先ほど着用していたパンツ「MASON」の色違い。キャップ、カバーオール、シャツ全てイギリスの<Drake's>です。足元はこちらも<Clarks>のワラビーをチョイスしました。
無骨なアメリカっぽく見えるけど、じつはイギリス繋がり。
土臭くてラフなスタイリングを意識してみました。パンツのモデルはキャンバス生地の「FOUNDATION」です。
そのウエスタンシャツはどこの?
シャツは<WYTHE>。ウエスタンがこの秋冬さらにフォーカスされているので。サイジングはゆとりを持たせつつ、ド直球に合わせてみました。
Jacket [SHIPS] ¥108,900 (inc. tax)
<SHIPS>ラグジュアリーラインのジャケットは、ブレザーに「INDEPENDENT」を合わせていた諸先輩方を思い出してチョイスしました。当時はボタンダウンシャツにニットタイ、足元は<ALDEN>が定番でしたが、今季ならさっきの松ちゃんみたいに、ウエスタンシャツやコーデュロイのシャツやブーツを合わせてみたい。
Coat [ROMANO RIDOLFI] ¥107,910 (inc. tax)
イタリアの<ROMANO RIDOLFI>はドレスウェアにミリタリーをミックスさせたパイオニア的存在。国境超えつつも、テイスト的に通ずるアウターをチョイスしました。ドレスウェアにこの手のアウターを羽織るスタイルに憧れていて、もっと大人になったらさらっと着てみたい。
<grown and sewn.>と比べる対象がヨーロッパのブランドだったんですが、改めてアメリカのチノパンという背景で時代感とか掘り下げていくと、色々な魅力が見えてきました。
本来SHIPSって、オリジナルでもアメリカ製のプロダクトが多かったんですよね。それこそ<SHIPS GENERAL SUPPLY>はレーベル自体がアメカジをベースにしたコンセプトで、根強いファンが多かった印象です。
<grown and sewn.>もその大きな流れで人気が出たブランドの一つだったと思います。
みんながアメリカ物を好物にして、チノパンを穿いてって時代。
すごく新しいわけでもないし、クラシックでもない。アメリカ製の大切にしたくなる部分を、過去の完全再現じゃなくていいバランスで復刻している。その塩梅で成り立っているブランドです。
でも、現代は多国籍というかミックスの時代。アメリカだけに固執するとちょっと浮いて見えますよね?
アメリカが好きでも、好きの意味合いが時代とともに変わってきている気がします。
SHIPSのオリジナルが時代とともに変化したのに対して、<grown and sewn.>は今も変わらず、アメリカらしさに対して愚直に向き合っている。その良さをこれからも打ち出していきたいですね。
Jacket [SHIPS] ¥108,900 (inc. tax)
Coat [ROMANO RIDOLFI] ¥107,910 (inc. tax)