デザイナー・絵描きとして活躍する小磯竜也氏と、元YOGEE NEW WAVESのドラマー粕谷哲司氏による「Paper Music」。
7/25(火)からSHIPS 渋谷店にて開催されるイベントで初めてお披露目され、SHIPSとのコラボグッズも登場。
彼らの“遊び”「Paper Music」とは?

「Paper Music」とは?

小磯さんと粕谷さんにインタビューを敢行!
Paper Music」のはじまりからその全貌までを探っていきました。
#01「遊び」のはじまり

ーーまず、お二人の出会いから「Paper Music」始動までの経緯を教えてください。

粕谷(写真右)2017年にYOGEE NEW WAVESのTシャツのイラストを小磯くんに担当してもらったんですよね。
小磯(写真左)はい。最初に会ったのはその打ち合わせで、新宿の「檸檬」という喫茶店でした。
粕谷それ以降はそんなに繋がりがなくて、この2年くらいですかね。
小磯コロナ禍でいろいろと止まっていた間に悶々と作っていたものを、2020年にこの西荻窪のギャラリーで展示したんですよ。コロナ禍の気持ちを吐露するみたいなプライベートな展示だったんですけど、そこにひとりでふらっと来てくれて再会して。
粕谷もう覚えていないと思っていたので「ご無沙汰しています!」みたいな感じで。
小磯そこからまた交流が始まって。主に音楽やものづくりの話をしていくなかで、作ることの楽しさも苦しさも共感できて、目線が合うなぁと思っていました。
粕谷コロナ禍でお互い思うように自分の表現ができていないときに、そのモヤモヤを発散する場所がないことに悩んでいて。何か別の表現方法がないか探っていたんです。
小磯この切り絵会は、そんななかで趣味のひとつで始めたっていう感じですね。「絵は描けないしなぁ〜」って言うから、コラージュとか、切り絵っていうのもあるよっていうことで、アンリ・マティスの『JAZZ』という切り紙絵作品の版画集を見せたら気に入ってくれて。
粕谷音楽がモチーフだったこともあって、共感値がすごく高くて。そういう表現だったらできるかもしれないねって。次に会った時には、小磯くんの作業スペースに切り絵をする準備が出来上がっていて。「やりましょう!」って(笑)
小磯整えちゃったんだね、僕が(笑)
粕谷そこからルール説明が始まって。

ーールールがあるんですか?

粕谷こういう感じでやってみようみたいなことはもともと決まっていて、そこにふたりで話し合いながら、じゃあ時間はひとり3分くらいでとか、タイマー鳴らしますか、とか。
Paper Music」のルール
1

ジャンケンで勝った人が先攻or後攻を選ぶ

2

一手3分でタイマーとジャズをかけ始める
(一枚貼ったら交代、悩んでも3分まで。)

3

相談はしない

4

やり直しはしない

5

パスは何度でもOK

6

パスが連続したら終了(完成)

ーーゲームみたいですね。

小磯将棋とか囲碁とか、まさにゲームです。ひとり用のゲームをふたりで交代しながらやるみたいな。普通に息抜きとして、遊びでやりたかったんです。楽しみで始めたものが軌道に乗ってきて求められることが増えてくると、楽しいだけでは済まなくなってきて、主戦場になってしまうじゃないですか。
粕谷だから最初は、作って、この時間楽しかったよね〜って言って、その後一杯呑みに行くだけで完結していたんです。
小磯そうそう。終わった後に、将棋の感想戦みたいな感じで。お互い貼った順番覚えてるんですよ。あそこの一手は良かったよね、みたいなことを言いながら(笑)
#02 Paper Musicになったワケ

ーージャズをかけるのもルールなんですね。

小磯マティスの『JAZZ』という作品がきっかけなので、最初からジャズを聴きながら貼っていってみよう、というのが一番の軸になっていて。アルバム一枚を聴きながらそのインスピレーションで貼っていくので、「Paper Music」というタイトルがつきました。
粕谷実際に、ジャズセッションに近い感覚がすごくありますね。即興性もあるし、時間の概念もあるじゃないですか。それに、音楽って空間に対して音を埋めていく作業なんですよね。切り絵でも、お互いにどこまで埋めてどこまで隙間を作るかっていうところが似ていて。
小磯埋めすぎちゃうとカッコ悪くなっちゃうしね。
粕谷そうそう。隙間があった方が気持ちいい、グルーヴするよねみたいな感覚。これをやる前からずっとそういう話をしていたところが、作品として出ている感じがします。
小磯相手の一手をいかそうと思うこともあれば、裏切ろうとか、壊そうとか、ひっくり返してやろうと思うこともあって。そこにゲーム性があって面白いんです。

ーー選曲はどうしているんですか?

小磯毎回の選曲は基本的には粕谷くん。その曲のイメージで、選ぶ紙の色とか切る形が変わってくるので、本当にジャズのセッションみたいに即興なんです。音楽をテーマに切り絵をやってますっていうよりは、僕の感覚としては、紙で音楽を演奏しているっていうような。「目で見る音楽」みたいなふうに思ってもらえたらいいなって。
粕谷実際にそのときにかけていたアルバムを聴いてもらえたら、なんとなく伝わるかなという気がしていて。どうやって聴いてもらうか模索中です。
小磯作品の裏には日付とそのときのアルバム名を記録しているので、聴きながら見てもらうような工夫はしたいなと思っています。「なるほど〜」みたいな高尚な感じに捉えてほしいわけじゃなくて、僕たちが遊んだときに近い感覚で見てもらえたらなと思いますね。
#03 SHIPSコラボについて

ーー今回のSHIPSコラボのマグカップではどちらが先攻だったんですか?

粕谷小磯くんですね。僕がジャンケンで勝って後攻を選びました。初めて商品になるものの一手目はヤバいなって。先攻の一手目って、最初のベースになるので結構重いんですよね(笑)やり直せないし。
小磯ある意味、遊びじゃない部分もあったんですけど、途中から、いつも通り遊んでいった方がいいものが作れるってなって、自由にやりました。

ーーやり直しはしないのもルールですもんね。

粕谷それがミソで。一回ハサミを入れてしまったら戻せないし、糊で貼ってしまったら剥がせないっていうのがスリリングで面白いです。
小磯仕事の場合は修正はしますけど、やりすぎるとつまらないものになるので、なるべくそのままがいいんですよね。
粕谷音楽の場合でもピッチを修正しすぎると、なんだか感動できなくなったりするんです。

ーーロックバンドの1stアルバム最強説みたいな話と近いんですかね?

粕谷まさにそうですね。みんなヘタクソだけど、気持ちを思いっきり入れて弾いてて、だからいいみたいなところはやっぱりあって。上手くなって細かいことを気づきはじめると、なんかきれいにまとまり過ぎちゃったなっていうようなことになるんですけど。切り絵でも、最初の頃って糊づけがテキトーだったんですよ。でも最近は、きれいに貼らなくちゃって思うようになってきてしまって。
小磯きれいに貼れないから貼る場所変えちゃうって、遊びとしても違うよなみたいな。SHIPS 渋谷店で切り絵を展示することが決まったときも、いいヤツ選んでちゃんとしないとなって、きれいにまとめようとし始めちゃっていたんですよね。
粕谷2nd, 3rdアルバムみたいなテンションにね。最初の頃の、汚くてもここに絶対貼るんだ!これしかない!みたいな遊びの感覚を大事にしようって、再認識しましたね。
小磯そうそう。仕事になっちゃう感じになりそうだったので、一枚目のアルバムのような衝動を、そのまま会場でも表現できたらいいなと思いますね。
#04 やり直しができないのがミソ
#05 「遊び」が大前提

ーー「Paper Music」は今後どうなっていくんでしょう?

粕谷この時間が楽しくて、リフレッシュされることも多いし、自分の本業に持って帰れることも多いので、やりたい時にやって、それで作品が溜まっていって発表できる場があったらいいですけど、でもそれを目標にするとまたおかしなことになってしまうので、やりたいからやる、という前提がある限りはずっと続くんじゃないですかね。
小磯趣味ですからね(笑)

ーー最後に、読者に向けたメッセージをお願いします!

小磯鑑賞に来てもらうというよりは、こういう「遊び」あるよ、っていうのを紹介できたらなと。で、意外といいのできたよ、みたいな。それを見てもらえたら嬉しいです。
粕谷自分が抽象的な絵を見にいく動機って、インスピレーションを求めたり気分を変えたいときに見に行くことが多くて。ライブに行ったり音楽を聴くのもそうだと思うんですけど、それと同じような感覚になってもらえたらいいなと思っていて。なんか今日がいい日になったな、みたいな。「Paper Music」やってみようでもいいし。
小磯それですね(笑)。絵を見るひとは、何が描かれているかわからないと、わからない=つまらなかったってなりがちなんですよ。わかるかわからないかっていうのを考えちゃうんですよね。音楽だったら、歌詞のないイントロでもズドンときて感動したとか、あるじゃないですか。抽象画を見て、なんだかよくわからないなっていうひとも多いので、わからなかったことも楽しんでほしいですね。
粕谷もう、感覚100で、受容体になってきて欲しいですね(笑)。すべてを受け入れてもらえたら面白く感じられるんじゃないかなと思います。

ーー楽しみにしています!今日はありがとうございました。

Profile

小磯 竜也
@koin89

絵描き、デザイナー。1989年群馬県生まれ、東京都在住。2013年東京藝術大学卒業後、フリーのアートディレクターとして活動を始める。ポスター、広告、書籍、音楽関係のアートワーク、店舗空間など幅広いメディアでデザインを手掛けている。

粕谷 哲司
@kas_fe4

1991年埼玉県生まれ。自身が新たに組んだバンド、brkfstblend(ブレックファストブレンド)のドラム。他にもサポートドラムとしても活動中。ex.Yogee New Waves。

Items for SHIPS

切り絵グラフィックがSHIPSとのコラボでグッズになって登場。
そのインスピレーションとなったアルバムのプレイリストと合わせてチェック。

Item 01

マグカップ
¥2,860(inc. tax)

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『Black Coffee』Peggy Lee
1.Black Coffee - Single Version
2.I've Got You Under My Skin - Single Version
3.Easy Living
4.My Heart Belongs To Daddy - Single Version
5.lt Ain't Necessarily So
6.Gee Baby (Ain't I Good To You)
7.A Woman Alone With The Blues
8.I Didn't Know What Time It Was
9.When The World Was Young
10.Love Me Or Leave Me
11.You're My Thrill
12.There's A Small Hotel

Item 02

Tシャツ
¥4,950(inc. tax)

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『Sounds Out Burt Bacharach』cal tjader
1.Moneypenny
2.What The World Needs Now
3.Anyone Who Had A Heart
4.Don't Make Me Over
5.Message To Michael
6.My little Red Book
7.I Say A Little Prayer For You
8.Walk On By
9.You'll Never Get To Heaven(If You Break My Heart)

※ターンテーブルは付属しません

Item 03

スリップマット
¥2,420(inc. tax)

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『蛇の道』 selected by 粕谷 哲司
1.Blue Train - Remastered 2003/Rudy Van Gelder Edition:ジョン・コルトレーン
2.Moment's Notice - Remastered 2003/Rudy Van Gelder Edition:ジョン・コルトレーン
3.Countdown - Mono:ジョン・コルトレーン
4.Maiden Voyage - Remastered:ハービー・ハンコック
5.Time Was:ジョン・コルトレーン
6.Avalon:ベニー・グッドマン
7.Newk's Fadeaway::ソニー・ロリンズ
8.Impressions:ジョン・コルトレーン
9.I'm Old Fashioned - Remastered 2003/Rudy Van Gelder Edition:ジョン・コルトレーン
10.Dizzy On The Sunny Side Of The Street:100 ディジー・ガレスピー,SonnyStitt,ソニー・ロリンズ
11.Grapefruit Moon:トム・ウェイツ
12.Days Of Wine And Roses:デイヴ・グルーシン
13.Love Is Here to Stay:デイヴ・グルーシン
14.My Favorite Things:ジョン・コルトレーン
15.Sandu:クリフォード・ブラウン,MaxoacQuinet
16.My Little Brown Book:デューク・エリントン,ジョン・コルトレーン
17.Take The Coltrane:デューク・エリントン,ジョン・コルトレーン
18.Big Nick:デューク・エリントン,ジョン・コルトレーン
19.Naturally:渡辺貞夫
20.It Could Happen To You:福居良
21.Things Are Getting Better:キャノンボール・アダレイ,Milt Jackson
22.September in the Rain:Antonio HartBilly Higginsクリスチャン・マクブライドロイ・ハーグローヴStephen Scott
23.Bye Bye Blackbird:Keith Jarrett Trio
24.Softly As In A Morning Sunrise:ソニー・クラーク
25.Stella By Starlight:キース・ジャレット, Gary Peacock, Jack DeJohnette
26.All Alone:マル・ウォルドロン
27.Sunset And The Mocking Bird - The Queen's Suite:デューク・エリントン
28.Alfie's Theme Differently - From "Alfie" Score:ソニー・ロリンズ
29.Yes Or No:ウェイン・ショーター
30.Teach Me Tonight:Dinah Washington
31.Don't Explain:ビリー・ホリデイ
32.Come Rain Or Come Shine:Monica Zetterlund,ビル・エヴァンス
33.It Could Happen to You - Remastered:Horace Parlan

Information

「Paper Music」@SHIPS SHIBUYA


7/25(火)〜SHIPS 渋谷店にて「Paper Music」初となる展示イベントを開催。これまでの作品のほか、SHIPSのファブリックをミックスさせたコラージュ作品も展示予定。また、今回のイベントを記念した切り絵グラフィックがSHIPSとのコラボでグッズになって登場。すべてSHIPSでしか入手できないスペシャルなコラボアイテムは見逃せない!

開催日:7/25(火)〜8/6(日)
開催場所:SHIPS 渋谷店

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