スーツやジャケパンスタイルに好相性なビジネスコートとは? 大人の選択に相応しい、素材にこだわったおすすめのスタンダードな5着を、スタッフの着こなしとともに紹介する。5年10年着られるタイムレスなコートを手に取ろう。
カシミヤ混の
チェスターフィールドコート
上質なオーストラリア産メリノウールにカシミヤをブレンドしたイタリア製のショートビーバー素材で、上品な風合いと光沢、柔らかな肌触りが特徴。テーラードのものづくりを踏襲し、クセ取りやいせ込みを施して手作業を随所に取り入れた、立体的で柔らかな仕立て。スポルベリーノタイプは軽く動きやすいのも魅力だ。スラントポケットにはスポーティな趣があり、カジュアルなスタイルにも合わせられる。
坂田「クラシックなものが好きで。トレンドに左右されない、至極普遍的なもので、着心地も重視。セオリーは抑えながら、個性を出せるスタイルを心がけています。今日は5年前に買ったスーツスタイルに。<LUIGIBORRELLI>の季節感のあるネクタイ、胸元のポケットにはさりげなくグローブを挿してカシミヤのマフラーを合わせ、スタイリッシュにコーディネートしました」
坂田「コート選びで重視したいのは、よい加減の生地と仕立て。トレンドに左右されづらいシンプルなデザイン選びも、多くのスタイルに合わせる上で、重要な要素だと考えます。安心感のある普遍的な一着を長く愛用していきたいですね。このコートはカシミヤが10%混紡されており、肌触りはもちろん、生地と仕立ての確かさから得られる着心地の良さも、自信を持っておすすめします」
ロロピアーナ社製生地の
エシカル×機能性コート
ロロピアーナ社が開発した、50%再生可能な植物由来の「グリーンストームシステム」。環境にやさしい素材でありながら、ウール本来の上質で柔らかな肌触りと光沢感に加えて、撥水、透湿、防風性を持ち合わせた高機能素材。フライフロントの端正な顔立ちに、程よくゆとりのあるサイジングから生まれるしなやかな生地のドレープがエレガント。天候を気にせず着られるリッチな定番コートだ。
小川「コート+スーツの着こなしは正統派。このコートはモダナイズされたムードが今季おすすめのクラシックな英国スタイルにもよく合います。ライトウェイトのサキソニー生地で作られた<Valditaro>のヘリンボーン柄スーツには、芯なしのシルクタイなど軽い仕立てのネクタイを選んで、見た目の表情を合わせながら重々しく見えないようにしました。ノットの収まりがいいものを選ぶのもいいと思います」
小川「正統派なスーツやコートの着こなしには、色柄を取り入れるのがおすすめ。クラシックな柄は流行り物には見えませんが、そこにどことなく今っぽさが出るのが今シーズン。マフラーはコートと対比になるような色を選ぶと軽快に見えて、コーディネートの雰囲気が堅くなりすぎません」
ドーメル社製新ファブリックの
バルマカーンコート
1842年パリ創業のラグジュアリーファブリックブランド<DORMEUIL>。同ブランドを代表する「スポーテックス」の100周年を記念して発表された素材を採用。ラムズウールとベビーアルパカをブレンドしたラグジュアリーな趣に、耐久性と快適性を追求して開発された新シリーズだ。伝統と現代に求められる機能を融合したファブリックで仕立てたラグランスリーブのバルマカーンコートは、その特徴ともいえる襟立ちの良さにも、フランスのエスプリとエレガンスが漂う。
伊藤「このバルマカーンコートはいい意味でやや堅い印象があるので、ガウンを羽織ったようなリラックス感のあるスタイリングをイメージしてワンサイズアップし、ボタンは留めずにベルトだけをフロントで結びました。ヘリンボーンのコート、チョークストライプのスーツと英国っぽいものに倣って、足元は<CROCKETT & JONES>のダブルモンクストラップシューズを合わせました」
伊藤「例えば、ワンサイズアップしたコートのサイズ選びもそうですし、今日のスーツとシャツの雰囲気だとネクタイはネイビーを合わせがちですが、あえてグリーン味のあるブラウンでワンカラーをプラスしたり、普段の着こなしでもどこか一箇所はひねりを加えるようにしています」
パッカブルなライナー付き
コットンコート
オルメテックス社の撥水機能を持つコットン素材に、世界最薄のメンブレンを貼って防水、防風、透湿性の機能を付け、PFCフリーで環境にも配慮した別注素材。着脱可能なライナーの中綿は、リサイクルのカシミア・ウールを原料にしたCASHPAD®を使用。春まで3シーズンは着られる。そのうえこのライナーはパッカブルでコンパクトに収納でき、旅行や出張時にも便利。シンプルで万能なステンカラーコートに多くの機能性を盛り込んだ一着。
佐藤「コートは玉虫色で上品な光沢感に表情がありますが、形としてはシンプルなステンカラーなので、英国調になり過ぎないように。グレンチェックのスーツとクレリックシャツ、ダブルモンクストラップシューズとモノトーンでまとめつつ、グリーンを挿して堅さを和らげました。ポイントは足元のハズし方。シューズがローファータイプであることと、これに合わせた柄ソックスで、英国スタイルのなかで抜きどころを作りました」
佐藤「ブリティッシュ、アイビー、クラシコイタリアなど、ドレススタイルでもいろいろなジャンルがあるなかで、その時々でどのスタイルなのかを明確にしつつ、どこかに抜けを作るのが自分のルール。ストイックにやり過ぎるとコスプレみたいになってしまうので(笑)、肩パッドの具合だとか、ちょっとしたことでバランスを取るようにしています」
ダブルフェイスの
ショート丈カーコート
カシミヤに匹敵する繊細かつ滑らかなタッチが特徴の接結ダブルフェイス素材。オーストラリア産の17.5マイクロンメリノウールをミュール紡績した、伸縮性があり切れにくく膨らみのある紡毛1/16の糸、アザミを使用した起毛加工によって、多くの空気を含み軽くてあたたか。スーツやジャケパンスタイルに重宝する冬の主力アウターとして人気が高い定番モデルだ。ショート丈が軽快かつスポーティに着こなせる。
森「コート選びでは何より素材を重視します。頻繁に買い替えるようなものではないですし、長く着られるものの基準はやっぱり素材の良さにあると思います。着こなしにおいても、それぞれのアイテムの素材の特徴がいかせるような組み合わせを意識しながらコーディネートするようにしています」