SHIPS MEN
JOURNAL
大人になるにつれ、トレンドの移り変わりだけでなく、洋服以外に覚えた興味・関心がファッションのインスピレーションになります。ドレスクロージングに身を捧げた男たちが、新しいスタイルに出会うきっかけの一つに植物がありました。体現する二人のスタッフの経験や言葉から、その魅力を探ります。
アミュプラザ博多店に勤務する楠本は、結婚をし、家を購入したことをきっかけにグリーンへの関心を強めました。建築家、谷尻誠さんの手がける作品、また福岡の有名なベーカリーの内装にも影響を受けています。ホテルライクな家で暮らしたい、と思った時にどういった空間をデザインするか。「ドレスのコーディネートと同じように、家具とグリーンを組み合わせる楽しさを感じている」と楠本は言います。
植物にとって不可欠なもの、それは太陽であり、光であり、水。大地の恵みを感じさせるような自然のカラーリングが、楠本の着こなしにリンクするようになりました。グリーンやオリーブ、そしてブラウン。「落ち着きがあり、温もりを感じるカラーリングは、スーツやジャケットを着飾るジェントルマンの作法を、美しく見せることができるのです」。
と、同時にこれらは秋を表現するカラーであり、季節的にもぴったり。中でもコーデュロイはその象徴的なファブリックです。植物への興味が湧いたとき、縦へ走る畝に、今までになかった奥行きと有機的なムードを感じるでしょう。今季は、人気であるカルーゾのアイーダに繊細で上品なコーデュロイ生地に載せ替えました。特徴的な約11cmものワイドラペルモデルは、まるで大きな葉を連想させます。
Jacket [CARUSO × SHIPS] ¥253,000(inc. tax) 
結婚を記念に購入した夫婦の初めての思い出がカシワバのゴムの木だった大宮店の橋。「ともに成長できる、という視点で選びました」。以後、家族が増えたり家を購入したり、と人生の節目でグリーンが増えていきます。「自由に育っていく葉のおおらかさ、葉脈の美しさに惹かれるうちに、スタイリングの色の参考になった」と橋は言うように、生活の一部であるグリーンが、自分だけのファッションの教科書になりました。
「環境によって、育てる人によって、同じ品種でもまったく育っていく様が変わる植物は、生産背景をもつファッションアイテムと同じ気がする」と橋は言います。スタンダードな服を自分色に染めていく。そのプロセスを植物にも捧げています。シンプルな見た目だからこそ、細部にこだわりが光るLES LESTON for SHIPSの白シャツのように、着る人の個性が映し出されます。
( Left to Right )
Shirt [LES LESTON for SHIPS] ¥39,930(inc. tax) 
育て方が難しい繊細な植物もあれば、放っておいても強く育っていく植物がある。それはファッションも同じこと。温度や湿度管理、光の入り方。微細にこだわることで魅力的に見えてくる植物と、ハンドステッチで縫われているStefano Cau のタイに注ぐ感情は、橋にとって同じです。「手間と時間をかけているこのエンブロイダリータイには植物のような温もりを感じます。それをドレスに装いたい」。